あとがき

 

 投稿サイトに趣味で小説を書くようになってもうすぐ八年。怖いミステリーを書き終えた頃でした。さて、次はどんなお話を書こう?  この瞬間が何よりも楽しいものなのです。久しぶりに恋愛小説もいいし、ホラーも書いてみたい。サスペンスはどうかなあ?  あれこれ考えていると、小学五年生になりたての娘が、ふいに、こんなことを言ったのです。
「お母さんって、どんなお話を書いてるの?」
 はた、と気づきました。今まで色々なお話を書いてきましたが、すべて大人の読者様を想定していたので、自分の作品の中に、今の娘が読んで楽しめそうなものがなかったのです。 そうだ。今回は大人の読者様はもちろん、娘が読んでも楽しめそうなお話を書こう。それがこの『三毛猫カフェ  トリコロール』の始まりでした。
 そして主人公で語り手である『虎羽』の名前は、寅年生まれの小学一年生の息子に、つけるかどうか、彼が生まれるギリギリまで悩んだ名前でした。結局彼は違う名前になりましたが、せめていつか登場人物の名前に使えたらなと思っていましたので、今回こんな形で望みを叶えました。
 
 私たちが姫路で暮らし始めたのは五年生の娘がまだ赤ちゃんだった頃でした。
「所変われば品変わる」
 姫路に来て、白鷺城ももちろん美しくて感動しましたし、渋滞の先にあった播州祭り屋台の華麗さや迫力にも驚きましたが、華鈴よりも食いしん坊な私が何よりも嬉しかったのは、本当に美味しいものが多かったこと。美味しいお店が多く、面白い方が多く、その感動と驚きを作品に盛り込もうと奮闘したつもりです。
 
 新人にも関わらず、大変な我儘を言いました。お許しいただけるものなら、実在する企業やお店のお名前や商品名を使わせていただきたい。このとんでもない申し出を受けてくださいました企業様、お店のご店主様、本当にありがとうございます。私の夢を叶えていただきました。
 
 書籍化にあたり、いつも様々なアドバイスをして下さった担当編集者の長谷川様、絵をお描きになる方の素晴らしいイマジネーションを見せて下さった表紙を担当して下さいました長乃様、ありがとうございます。
 今まで読んでくれた読者様、これから読んで下さる読者様、見つけて下さってありがとうございます。誰かが読んでくれるから、続けてこられましたし、これからも続けていけます。
 最後になりましたが、夫に。小説を書いていると初めて打ち明けた時の驚いた顔が今も忘れられません。今回このような機会に恵まれて、私以上に喜んでくれたのが嬉しかった。いつも励ましてくれてありがとう。
「しろがしろすぎる」
 貴方の駄洒落が、この物語の冒頭なのだと知ったら、驚くかな? どんな顔をするのか今からとても楽しみなのです。
 そして、この作品に関わって下さった全ての方たちに限りない感謝を込めて。
 

星月 渉