あとがき

 
 

 どうも。ハッピーセットについてこなかった梨の妖精のおもちゃが忘れられず、リベンジゲットしてきた風島です。こんにちは。

 読んでくださった方の中にはお気づきになった人もいるかもしれませんが、この「零の記憶」では、書籍の中に物語の中では語られていない、もうひとつの真実が隠されています。
 まだ見つけてない方は、どうぞ今一度ページをめくってみてください。
 見つけてくださった方は、どうぞ新しい視点から新しい物語を見つめてください。
 真実は、人の数だけあるのです。

 私の脳内では、常にとどまることなく妄想が巡っています。
 ちょっとした刺激から、反射的に物語の断片が生まれては、消えていく。
 消えなかった断片は、やがて周辺の設定やらつじつまやらを寄せ集めてひとつの物語になります。
 今回の場合、まず見たのは零と一貴の噛み合わないやり取りのシーンでした。
 零は突っぱね、一貴は笑った。
 それが何故なのか。この人達はなんなのか。なぜこの反応なのか。この後どうなるのか。その前はどうだったのか。そういうことを突き詰めて、物語に始まりがつくられ、終わりに向かって動いていくのです。
 割と初期段階に決まるのはキャラクターで、これは脳内にスタンバイしている私のお抱え役者たちに配役されます。
 彼らは独自に役を消化して、それぞれの人生を抱えて舞台に上がるのです。

 私にとって執筆とは、役者達との仁義無き戦いです。
 何が戦いって、全てですよ。全て。
 役者達は私から、おそろしくざっくりした台本(プロット)を渡されるだけなので、ほぼアドリブで物語を演じます。
 私はそれを、必死になって記録してくわけですが、そうすると打ち合わせに無いことを始めるやつとか、それはできないとか言って立ち止まるやつとか、目え離した隙にいちゃつくやつとか、え、なんで今キレたの? とか色々出てくるんです。ほんと色々。
 それをですね。宥めたりすかしたり説得したり泣き落としたりして物語を前へ前へ送るんです。まさに脳内戦争。
 今回一番驚いたのは如月睦の存在です。
 彼女ほんとは予定に無い人だったんです。友情出演だかゲリラ出演だか知りませんが、気がついたらいて、しかも結構長いことしゃべって出てったので、目が点になりました。

 そんなこんなでドタバタしながら書いた作品が、まさかの書籍化。まさかの書籍化!!(二度言った)

 本を作るってすごいです。
 物語を書くのは孤独な個人プレーですが、本を作るのはチームプレー。
 イラストレーターさん、校正さん、デザインさん……私たちはまるで、オーケストラを奏でる一つの楽団のようでした。
 言うまでもなく、中心に立って指揮棒を振り、各パートをつなぎ、私たちを導き続けたのは担当編集さんです。
 本当に本当にたくさんの人と一緒に作った作品で、だから私にとっても、とても大事な作品になりました。

 読んでくださった方、ありがとうございます。まだ読んでいない方、これを見て、ちょっとでも興味を持ってくださったらとっても嬉しいです。

 最後に。
 修正する度何度も読み返してくださったというSKYHIGH文庫の川武當様。
 先生、と呼んでくださったメディアソフトの諏訪様。
 素敵な表紙を更に素敵にデザインしてくださったデザイン会社の方。
 無理を通していただいた本文ページを手がけてくださった組版の方。
 最後の一枚まで美しい字でご指摘をくださった校正の方。
 シフトを都合してくれた同僚様。
 物語に素敵な輪郭を与えてくださったカズアキ様(キャララフの時から興奮しておりました)。
 度重なる長居にも嫌な顔一つせず優しく接してくださった某喫茶店のスタッフご一同様。
 声を掛け合い、進捗を報告し合い、励まし合ったSKYHIGH文庫の作家仲間さんたち。
 知人の中でただ一人出版前に作品を読んでくれ、励まし、協力し続けてくれた美江。そんな奥さんを見守ってくれたひろ。そして、

 約半年という決して短くはない期間、相談に乗ってくださり、導いてくださり、心の支えとなってくださった担当編集者の長谷川三希子様。

 その他力を貸してくださった全ての方に。たくさんたくさんの愛と、感謝を込めて。
本当にありがとうございました。

 

風島ゆう