それは、ある冬の日のことでした。
友人と一緒に夕食をとった後、彼がデザートを出してくれたのです。それはほんのりとピンク色をしたいちご大福でした。
いちごの突端が大福の上にうっすらと赤く見えるそれを食べた後、私は何気なく言いました。
「赤って扇情的な色なんだってね」
「はあ」
「つまりこのいちご大福も、見る人によっては何らかの劣情をもよおす対象になってもおかしくないよね」
「はあ」
「そんな男がいたらおかしいよね。いちご大福を見て欲情する男」
「はあ」
そんなやりとり、もとい一方的な話からヘンタイの杉元が生まれました。
アダムができたらイブも必要です。次は、誰にも何にも欲情しない松樹を作ってその隣に放り込みました。
すると、彼らは勝手に動き回ろうとします。しかし、まだ世界ができていませんでした。
それでは可哀想です。
そこで私は、七日をかけて――実際には半年をかけて、この「おいしいは正義」というお話の世界を作りました。
せっかく作ったそのお話。お披露目をしたくなるというのが人情です。
そこでE★エブリスタさんのサイトへこのお話を投稿すると、SKYHIGH文庫さんからお声をかけていただきました。
それが、この小説が世の中へと出ることになった経緯です。
読んでくださった皆様。
この物語はいかがでしたでしょうか?
何かひとつでもくすっと笑ってもらえたり、なるほどなと頷いてもらえたりしたなら、嬉しいです。
そんなこの物語は、私ひとりの力だけでは皆様のお手元に届くことはありませんでした。
あとがきというこの場を借りて、この本に関わってくださった方々に改めてお礼を申し上げます。
私に新しい経験を積む場を与えてくださった三交社の須藤さま。
ビールでエールをくださった諏訪さま。
「お話」を「小説」にしてくだった、笑顔が素敵な編集の長谷川さま。
鋭い指摘で小説の輪郭を整えてくださった校正さま。
お話の彼と彼女に、これ以上ないほど素敵なイメージを与えてくださったPOKImariさま。
馬鹿話に付き合ってくれた友人さま。
そして、このお話を読んでいただいた皆様。
本当にありがとうございました。
これからも、ちょっとおかしな人たちが悩みながらも頑張って生きていく姿を描いていきたいと思います。
あ、そうそう。申し遅れました。
私は松田未完と申します。
皆様、どうぞお見知りおきを。
松田未完